目次
1. 導入:展示会でのよくある悩み
展示会は新しい顧客と出会える貴重な場ですが、実際に出展された担当者からはこんな声をよく耳にします。
「ブースの前を多くの人が通るのに、誰も立ち止まってくれない」 「配布したカタログは受け取ってもらえても、そのまま鞄の中に埋もれてしまう」 「せっかくの大きな投資なのに、商談につながる件数が少ない」
こうした課題の背景には、展示会特有の環境があります。
来場者は限られた時間の中で数十社、数百社ものブースを見て回るため、じっくり説明を聞いてもらうのは難しいのです。
このときに力を発揮するのが、ブースで流す展示会動画です。
動きと音を伴う映像は数秒で目を引き、来場者の足を止める効果があります。展示会という特殊な場において、動画は営業活動を支援する強力な武器となるのです。
2. なぜ展示会では“動画”が有効なのか
人は本能的に動くものに注目します。
心理学的にも「静止画よりも動画の方が注意を引きやすい」ことは知られており、展示会場のように情報があふれる環境では特にその効果が顕著です。
さらに動画には、以下のような特徴があります。
・短時間で多くの情報を伝達できる:製品の動きや仕組み、導入事例を30秒で凝縮できる
・言葉が不要:音声が聞き取りづらい会場でも、映像と字幕で直感的に理解できる
・無人の営業マンとして機能する:スタッフが接客中でも、動画が代わりに説明してくれる
このように、展示会では「通りすがりの来場者を引き止める」という最初の関門を突破するために、動画が非常に有効なのです。
3. 展示会動画に求められる要素
展示会で流す動画は、単なる会社紹介映像とは目的が異なります。
ここで必要なのは「一瞬で興味を引き、数十秒で理解を促す」ことです。そのためには次の要素が重要です。
キャッチ力:冒頭3秒で来場者の視線を奪うインパクト
理解促進:専門的な技術や製品を、非専門家でも理解できる表現にする
差別化:同業他社のブースと比較しても記憶に残る演出
汎用性:展示会後もWebサイト、営業資料、SNSなどに流用できる設計
これらを意識することで、展示会動画は「場当たり的な演出」ではなく「営業活動を支える資産」として活用できるようになります。
4. 「止まって見てもらえる動画」の具体的な工夫
では、どんな工夫をすれば「止まって見てもらえる」動画になるのでしょうか。
秒数の工夫
1ループ30〜90秒程度が理想。長すぎると最後まで見てもらえず、短すぎると情報が伝わらない。
ビジュアルの工夫
製品の動きを強調する実写、仕組みを解説するCGやアニメーションを組み合わせると理解度が高まる。
テロップ・キャッチコピー
会場は騒がしく音声が届きにくいため、字幕と強いコピーでメッセージを伝える。
演出の工夫
冒頭にインパクトを持たせ、シンプルな構成で繰り返し視聴に耐えられる内容にする。
音声配慮
環境音に埋もれるナレーションよりも、BGMと字幕の組み合わせを重視。
これらの工夫は、来場者の注意を引くだけでなく、営業担当者が声をかけやすい「会話のきっかけ」にもなります。
5. 展示会動画の成功事例
株式会社大紀アルミニウム工業所 様
アルミニウムドロスを有価物化する廃棄物ゼロスキームの紹介動画
アルミニウム2次合金メーカーの廃棄物ゼロスキームの紹介動画。
アルミニウム製品の製造工程では、溶解時に溶湯の表面に浮き上がる滓(ドロス)が発生します。
ドロスは残った金属アルミを回収した後に廃棄されるため、環境負荷が懸念されていました。
このドロスを独自の処理フローによって、脱酸剤や発熱剤、スラグ改質剤などに活用できる鉄鋼用アルミ灰へと生まれ変わらせることで、廃棄物の有価物化や環境負荷の低減に貢献する流れをご紹介しています。
ロザイ工業 様
工業炉の状態がひと目でわかる 工業炉支援システムの紹介動画
工業炉の状態を見える化する工業炉支援システム「解 -wakaru-」の紹介動画。
工業炉のさまざまなデータを収集・分析し、設備の状況を見える化することで、ダウンタイムやエネルギー使用量、メンテナンスコストの低減に貢献。
工業炉の導入・運用において大きな割合を占めるランニングコストを削減し、24時間365日の遠隔監視で最適操業と保全を支援するシステムです。
約2分のアニメーション動画で、システムの特長や強みを端的にご紹介しています。
太陽工業株式会社 様
メンテナンス業務を効率化する常設点検足場の紹介動画
膜の特性を活かした新しい常設点検足場の紹介動画。
橋梁のメンテナンスに関する現状や製品のメリット、特筆すべき機能、エビデンスなどを5分程度にまとめました。
動画撮影が難しいこともあって全体をイラストと3DCGを使って構成。
撮影が可能な耐久試験や性能試験は動画を使うなど、さまざまな表現を使い分けてわかりすさを担保しています。
日本毛織株式会社 様
機能性と快適性を兼ね備えたウール製スポーツウェアの紹介動画
ウールの繊維束の内側にフィラメントを包み込み、ウールのソフトな風合いを最大限に活かしつつ快適性能高めた奇跡の新・交撚糸「NIKKE AXIO」
そのAXIOを使った幅広いシーンに対応できる快適性と機能性を備えたスポーツウェア「NIKKE AXIO PRO」の紹介動画
ショールーム等で放映することを想定し、1本を30秒・製品の特徴を3つのキーワードでまとめた動画に仕上げました。
スポーツウェアの「AXIO PRO」、リラクゼーションウェアの「AXIO RICH」、「AXIO(糸)の紹介」の3つの動画を制作しています。
椿本チエイン 様
V2X対応の充放電装置「eLINK」の製品紹介動画
パワーポイントなどの説明資料をベースに、端的に伝えたい事が伝わるように情報を最適化。
撮影はせず、既存資料とイラストを組み合わせることで短期間で完成。電力の流れなどの表現にアニメーションを用いることで、製品の特長やメリットをわかりやすく表現できました。
展示会場やWEBサイト、Youtubeなどでご活用いただいています。
株式会社てつでん 様
鉄道のセンサ機器の技術紹介動画
鉄道運行に関わる、様々なメンテナンス業務の負担を軽減できるセンサ機器の紹介動画。
専門的な技術を端的に90秒ほどでわかりやすくアニメーションで表現。
展示会やWEBサイトなどでご活用いただいております。








6. 営業活動を支援する仕組みとしての動画
展示会は単発のイベントではなく、営業プロセスの入り口です。
そのため、動画も単なる「場の演出」ではなく、営業活動を支援する仕組みとして考える必要があります。
呼び込み:動画で目を引き、来場者の足を止める
説明補助:映像を見せながら営業が解説することで理解が深まる
記憶定着:動画で印象づけた内容をQRコードやWebリンクで再確認してもらう
このように、展示会動画は「展示会そのものを成功させる」だけでなく、その後の営業フォローにつながる資産になります。
7. 展示会特有の環境制約
展示会場は通常の撮影環境とは大きく異なります。
強い照明で映像が飛びやすい、騒音で音声が聞こえにくい、人混みで画面が隠れるといった制約があります。
そのため「展示会用に最適化された動画」であることが重要です。
8. 動画の配置と導線設計
動画はただ流せばよいわけではありません。
– ブース入口:大型モニターで人の足を止める
– ブース中央:製品紹介動画で理解を深める
– 商談スペース:事例紹介動画で信頼感を与える
といったように、配置によって役割を分けることで営業活動と連動します。
9. 展示会ごとのターゲット特性
展示会の種類によって来場者の関心は異なります。
– BtoB展示会:意思決定者や技術者が多いため、仕組みや実績重視
– BtoC展示会:一般来場者が多いため、インパクトや分かりやすさ重視
ターゲットを意識して動画を設計すると、成果が一層高まります。
10. よくある失敗例
展示会動画には避けたい落とし穴もあります。
・1本に情報を詰め込みすぎて理解されない
・長尺すぎて途中で離脱される
・音声頼みで字幕がなく、騒音にかき消されてしまう
これらはありがちな失敗です。逆に言えば「シンプルで短く、字幕重視」が成功の鉄則といえます。
11:展示会後の二次利用
展示会用に制作した動画は、会期終了後も活用できます。
・フォローアップメールに動画リンクを添付
・SNSで「来場できなかった方向け」に発信
・自社サイトに展示会レポートとして掲載
こうした再利用によって、展示会動画は長期的に営業資産として働くようになります。
まとめ:展示会動画を武器にする
展示会は投資対効果が問われる重要な場です。
しかし多くの企業が「素通りされてしまう」という壁に直面しており、その壁を突破するのが「止まって見てもらえる動画」です。
インパクトある演出で足を止めてもらい、分かりやすい映像で価値を伝え、営業トークへとつなげていく。
この流れが確立できれば、展示会は単なるコストではなく、大きなビジネスチャンスへと変わります。
展示会動画は、展示会後も営業資料やWeb施策で活用できる資産です。
「一度作れば長く使える武器」として、営業活動全体を支える存在になるでしょう。
次回は「作って終わりではない!製造業の動画を『活かし続ける』運用の考え方」をテーマに、動画を資産化するための運用ノウハウを解説します。





