1. 導入:なぜBtoBでは「動画の効果測定」が難しいのか

BtoC領域では、動画の効果測定といえば「再生回数」「クリック率」「コンバージョン数」といった明確な数値が使われますが、製造業や医療業界などBtoB企業にとっては事情が異なり、単純にこれらの指標を適用できない状況があります。

まず意思決定のプロセスが長期的で複雑です。

営業、技術、購買、品質保証、経営層と、複数の部署が関わり、数か月から長いと年単位で導入検討を行います。

そのため通販サイトのように「動画を見てすぐ購入」というケースはほぼ存在しません


また、制作目的からして”単体で契約につなげる”ものではなく、「営業活用や採用活動、研修等を補助する」ことが目的であることが多いのです。

このような状況から、動画の効果を「CVR」「CPA」といった広告的指標だけで評価するのは難しいのが実情で、

本来、BtoB動画は業務をどれだけ支援し、効率化したかという観点で効果を測るべきです。

2. よくある誤解:数字だけで効果を測ろうとする落とし穴

「動画を作ったけど効果が見えない」という声は少なくありません。

その背景には「そもそも効果を見える化していない」ことや、反対に「広告的な数値で測ろうとしている」ことが考えられます。

業界や商材の特性上、YouTubeに動画を公開しても、何万回・何十万回と再生される(いわゆるバズる)ことはありませんし、そもそも再生回数は受注に直結しません。

Webサイトに掲載しても、直ちに問い合わせ件数の急増には結びつかない場合が多いのです。

しかし実際には、動画は営業現場での説明時間短縮、研修工数削減、展示会での注目度向上など、数字に現れにくい部分で効果を発揮しています。

重要なのは「動画がどの場面で役立っているか」を把握し、数字に表れる効果と定性的な効果の両方を評価することです。

3. BtoBにおける動画効果の正しい見方

ここでは、広告的な指標では見えないBtoB特有の効果を整理します。

営業支援効果

製品や技術を説明するのに、カタログやスライドでは時間がかかることがあります。動画なら動きや雰囲気を直感的に伝えられ、説明が短縮されます。

実際に「15分かかっていた説明が5分になった」「動画を見せたことで顧客からの質問が減った」という声も多く聞かれます

業務サポート効果

工場の安全教育や操作マニュアルを動画化すると、教育内容が標準化され、ヒューマンエラーが減少します。

特に安全教育などの分野では、ヒヤリハットや事故例などを安全に再現することができるため、万が一の事態を防ぎつつ教育の効率化・工数減に貢献します。

ブランド・信頼性向上

展示会で動画を流すことで、足を止めてもらえる確率が高まります。

採用では「現場で働く人の姿」を動画で見せることで安心感を与え、応募増加につながります。

社内合意形成への効果

BtoBでは稟議・承認が必須です。

提案資料だけでは伝わりにくい部分も、動画を経営層や他部署に見せると一発で理解され、承認スピードが上がることがあります
これは効果測定の一つとして注目すべきポイントです。

海外展開・多言語対応の効果

製造業や医療業界では海外顧客や監査対応も多く発生します。

動画に英語字幕や多言語ナレーションを付けることで、言語の壁を超えた説明が可能になります。

結果として、営業や技術説明の効率が向上し、現地出張や説明資料作成の工数を削減できます。

ナレッジ共有の効果

教育動画や手順動画は、社内に知識を蓄積する「資産」としての価値があります。

担当者が異動や退職をしてもノウハウが途絶えず、社内教育を継続できる点も重要な効果です。

4. 効果測定の具体的な方法

効果測定は「定量指標(数字)」と「定性指標(実際の声)」を組み合わせることが大切です。

活用例 内容
営業現場の声 「説明が楽になったか」「顧客の反応が変わったか」を聞き取る。
業務効率 教育時間の短縮、問い合わせ件数の減少、エラー発生率の低下を数値で比較。
展示会 名刺交換数、ブース滞在時間の変化をデータ化。
採用 応募数の変化、内定辞退率の改善を指標とする。
社内合意形成 承認にかかった時間や会議回数の減少を評価する。
海外展開 多言語動画を導入後の顧客理解度、追加説明の削減をチェック。

効果測定の主な指標

  • 定量指標
  • 説明時間短縮率、教育工数削減、名刺獲得数増加、エラー件数減少、応募数変化

  • 定性指標
  • 営業担当者の声、顧客の理解度、社員の安心感、経営層の納得度、海外顧客の反応

5. 導入前後の差分で測るという考え方

効果を測るときは「動画を導入しない場合」と比較することが重要です。

例えば工場見学対応。従来は年20回の案内に担当者が付き添い、1回あたり3時間、年間60時間を消費していたとします。

工場紹介動画を導入した後は、半数を動画視聴で対応できるようになり、担当者の負担が30時間削減されました。

このように「導入前後の差分」を数値化することで、動画の価値をより明確に伝えることができます

6. 将来展望:AIとデータによる効果測定の進化

今後はAIやデータ活用によって動画効果の測定方法も進化していきます。

– 動画再生ログを分析し「どのシーンで離脱が多いか」を可視化
– 自動翻訳・自動字幕生成によるグローバル展開の効率化
– 営業支援ツールやCRMと連携して「動画を見た顧客の行動」を把握

これらの仕組みを活用すれば、より精度の高い効果測定が可能になり、動画の費用対効果をさらに高めることができます。

7. まとめ:動画効果は「業務を楽にする」視点で測る

BtoB企業にとって、動画の本質的な効果は「業務がどれだけ楽になったか」にあります。

営業の説明が短縮された、教育が効率化された、展示会で注目度が上がった、社内稟議がスムーズになった、海外顧客への説明が容易になった──これらはすべて企業活動を確実に前進させる効果です。

動画を広告的な数字だけで評価せず、業務効率・信頼性・合意形成・ナレッジ共有といった多角的な視点から測定することで、動画を真の資産として活かすことができます。

制作した動画の効果測定方法について迷っている方、また動画制作を検討して上司から「それ作ってどのぐらい効果があるの?」と言われて対応に困っている方は、ぜひこの記事を参考に動画を有効に活用してください。