企業のマーケティングにおいて、SNS動画の活用は今や欠かせない戦略のひとつです。

総務省の調査でも、SNSでの動画視聴時間は年々伸びており、企業が動画を活用するケースも広がりを見せています。とくに若年層をターゲットとするなら、SNS動画は必要不可欠なツールといえるでしょう。

SNS上に動画を投稿することで、商品やサービスの魅力をより直感的に伝えられるだけでなく、ブランドの認知度や信頼感を高める効果も期待できます。

この記事では、「SNS動画をうまく活用するためのコツと、成果につながる動画制作のポイント」製造業・製薬、医療機器メーカーに特化した動画制作会社の株式会社エルモがご紹介します

SNS動画を活用する3つのメリット

SNS動画がマーケティングに効果的とされるのは、理由があります。
ここでは、動画ならではの強みと、SNSというメディアの特性がもたらす主なメリットを3つに分けてご紹介します。

1. 圧倒的な情報量で「伝わる」力が高い

テキストや画像だけでは伝えきれない情報も、動画なら短時間でわかりやすく表現できます。

商品の使い方や導入事例といった複雑な内容も、視覚と聴覚を使って直感的に伝えられるため、ユーザーの理解が深まり、興味・関心も高まりやすくなります

とくにSNSでは、情報が次々に流れていく中で「一目で理解できる」ことが重要です。

動画はまさにその条件を満たすコンテンツ形式といえるでしょう。

2. 拡散力が高く、自然と広がる可能性がある

SNSならではの特徴が、ユーザーの“リアクション”によって情報が広がっていく仕組みです。

興味を持った動画は「いいね」や「シェア」で瞬く間に拡散され、企業の存在や商品・サービスを知らなかった層にも届く可能性があります

共感を呼ぶストーリーや、驚きのある演出、クスッと笑える要素などを盛り込めば、拡散の起点になりやすく、結果としてブランディングにも大きく貢献します

3. 効果測定がしやすく、改善にもつなげやすい

SNSの多くは、再生回数・視聴時間・エンゲージメント(いいね・コメント・シェアなど)といった詳細な数値を確認できる分析ツールを提供しています。

「どんな動画が響いたか」「どの時間帯に反応が良かったか」といったデータが得られるため、次回の動画制作に活かしやすいのも魅力です。

数字に基づいて改善を重ねることで、動画の成果を着実に高めていくことが可能になります

動画配信に適した主なSNSプラットフォーム

SNSで動画を配信する際は、「どのプラットフォームを使うか」が成果に直結します。

各SNSにはそれぞれの特徴があり、ユーザー層や視聴スタイルも異なります。ここでは、日本国内でもとくに多くの企業が活用している主要SNSを6つご紹介します。

YouTube

世界最大の動画プラットフォームであり、年代を問わず幅広いユーザーが利用しています。

企業の公式チャンネルを立ち上げ、製品紹介・チュートリアル・インタビューなど、比較的長尺の動画を展開できるのが特長です。

専門性や信頼感を打ち出したい場合に適しています。

TikTok

短尺動画に特化したSNSで、若年層を中心に爆発的な人気を誇ります。

テンポよく、エンタメ性の高い動画が好まれ、トレンドへの即応性が鍵となります。

短時間で強い印象を残したいときや、認知拡大を狙うプロモーションに有効です。

Instagram

写真や動画といったビジュアル訴求に強いSNS。

近年では「リール」機能によって、ショート動画の投稿が急増しています。

ファッション、ライフスタイル、美容、飲食など、感性に訴える商材との相性が良く、特に20~30代女性の支持が厚いのも特徴です。

X(旧Twitter)

リアルタイム性に優れたSNSで、速報性や話題性のあるコンテンツとの相性が抜群。

投稿は短文+画像が主流ですが、動画も一定の効果を発揮します。

短めの動画でユーザーの興味を引き、詳細はリンクで誘導するといった導線設計が効果的です。

Facebook

30〜40代を中心に、ビジネス層にも利用者が多いSNS。

b比較的長い動画でも視聴されやすく、企業の公式ページを活用して丁寧な情報発信が可能です。

BtoB向けサービスや採用活動、ブランドストーリーを届ける手段としてもおすすめです。

LINE(LINE VOOM)

国内最多のユーザー数を誇るLINEにも、動画配信ができる「LINE VOOM」という機能があります。

友だち登録していないユーザーにもリーチできるため、幅広い層への拡散が期待できます。

日常に溶け込むような動画や、共感性の高いコンテンツが効果を発揮します。

SNS動画は“短くて伝わる”が基本

SNSで成果を出すには、ただ動画を投稿すればいいというわけではありません。とくに意識すべきなのが「動画の長さ」です。

多くのSNSユーザーは、タイムラインを流し見しながら興味のある投稿に目を留めるため、最初の数秒が勝負どころ

そして、内容もできるだけ“短く・わかりやすく”まとめるのが鉄則です。

とはいえ、動画の目的や伝えたい内容によって、最適な尺は異なります。

ここでは、SNS動画の長さを決める際に押さえておきたいポイントを紹介します。

短くてインパクトのある構成が主流

多くのSNSでは、15秒〜1分程度の短い動画が好まれる傾向があります。とくにTikTokやInstagramのリールなどでは、最初の3秒でユーザーの心を掴む必要があります。

そのため、動画冒頭で「面白そう」「役に立ちそう」と思わせるフックを仕込み、できるだけ簡潔にメッセージを伝える工夫が重要です。短くても“伝わる”、それがSNS動画の理想形です。

プラットフォーム別・おすすめの尺

プラットフォーム 推奨される長さ 特徴・ポイント
TikTok・Instagramリール・LINE VOOM 15秒〜60秒以内 スクロール中にパッと見て理解できるテンポ感が求められる
X(旧Twitter)・Facebook 30秒〜1分程度 速報性やトピック性の高い内容に向いており、短く濃い構成がベスト
YouTube 2分前後(目的次第で10分以上も可) 深い情報やストーリーを伝えるのに適しており、長尺動画も歓迎される

たとえば、以下のように目的に応じて尺を設計することで、効果的な動画に仕上げることができます。

目的 推奨される長さ 活用のポイント
認知度を高めたいとき 15〜30秒 SNS広告やショート動画として拡散重視の展開
商品・サービスの使い方を説明したいとき 1〜2分 実演や導入事例を交えてわかりやすく解説
企業紹介・採用活動など信頼構築を重視したいとき 2〜3分以上 ストーリー性を持たせて魅力や文化を丁寧に伝える

重要なのは、長さにとらわれず“誰に・何を・どう伝えるか”を明確にすること。

無理に短くするのではなく、伝えるべき内容が無駄なく詰まっていることが、最適な長さの目安になります。

成果を出すSNS動画制作、7つのポイント

SNSで動画を配信するだけでは、必ずしも成果につながるとは限りません。

ユーザーの心を動かし、しっかり伝わる動画をつくるには、いくつかの工夫が必要です。

ここでは、SNS動画制作で意識したい7つのポイントをご紹介します。

1. SNSごとの特性を理解する

まず大切なのは、「どのSNSに投稿するのか」を踏まえた設計です。

たとえばTikTokでは、テンポが速く視覚的に楽しい動画が好まれます。一方でFacebookでは、ストーリー性のある丁寧な構成や信頼感のあるトーンが求められます。

動画の内容や演出をプラットフォームに合わせることで、ユーザーの反応は大きく変わります

対象SNSの“空気感”を理解し、それにフィットする動画づくりを意識しましょう。

2. サムネイルで興味を引きつける

動画の再生を左右する最大の要因が、実は「サムネイル(表紙画像)」です。

ユーザーがタイムラインを流し見する中で「見てみたい」と思わせられるかどうかは、この1枚にかかっています

タイトルやキャッチコピーを画像に載せたり、色味や構図で目を引くデザインにしたりするなど、動画の魅力を瞬時に伝える工夫が欠かせません。

サムネイルは動画の“入口”なので、しっかりと設計しましょう

3. 冒頭の数秒で心をつかむ

SNSでは“最初の3秒”が勝負です。ユーザーは興味を引かれなければ、すぐにスワイプしてしまいます。

冒頭で「結論を先に伝える」「共感を呼ぶメッセージを出す」「驚きのある映像を見せる」といった仕掛けを盛り込むことで、続きを見てもらえる確率が格段に上がります。

4. ストーリー性で感情に訴える

ただ情報を並べるだけの動画は、すぐに忘れられてしまいます。

「課題 → 解決」「ビフォー → アフター」「お客様の声 → 効果」といったストーリーの流れを取り入れると、視聴者の記憶に残りやすく、共感も得やすくなります。

感情が動けば、動画の評価も拡散力も上がります。

たとえ数十秒の動画でも、小さなストーリーを意識して構成しましょう

5. テロップやナレーションで“音なし対策”

SNS動画の多くは、音声オフの状態で再生されます。だからこそ、テロップの存在は重要です。

ポイントを強調したり、補足情報を入れたりして、音がなくても伝わる動画に仕上げましょう。

また、ナレーションを加えることで、感情やトーンを乗せられ、より親しみやすい印象を与えることができます。

6. トレンドをうまく活用する

SNSでは「今話題のこと」が強く反応されます。

流行中の音楽、ハッシュタグ、ダンス、ネタなどをうまく取り入れることで、検索やおすすめ表示に引っかかりやすくなり、動画がより多くの人に届く可能性が高まります。

ただし、やみくもに乗るのではなく、自社の商品やサービスとの親和性を意識することが大切です。

7. “自社らしさ”を忘れない

SNSは流行の宝庫ですが、単なる模倣では他社の投稿に埋もれてしまいます。

競合と差別化するためには、「自社らしさ」をしっかり表現することが重要です。

たとえば、業界の専門知識を活かした切り口や、社員の人柄を映した映像、独自のサービスの裏側紹介など。

真似できないオリジナリティが、ブランドの信頼感を高め、ファンの獲得にもつながります

投稿して終わりにしない。SNS動画を“広げる”ための工夫

どれだけ良い動画をつくっても、見てもらえなければ意味がありません。SNS動画で成果を出すためには、「見てもらうための工夫」=拡散施策が欠かせません。

ここでは、動画のリーチを広げ、より多くのユーザーに届けるための代表的な手法をご紹介します。

SNS広告を活用する

もっとも確実に届けたい層にリーチできるのが、SNS広告の活用です。

SNS広告は、年齢・性別・地域・興味関心など、細かくターゲティングできるのが特徴。

たとえば「30代の技術職男性」や「関東在住の新卒学生」など、目的に応じた配信が可能です。

少額から始められる媒体も多く、費用対効果を見ながら柔軟に運用できるのも魅力。無理にバズを狙うのではなく、必要な相手に確実に届けたいときには、非常に有効な手段です。

インフルエンサーとの連携

SNSで強い影響力を持つ「インフルエンサー」の存在は、拡散を一気に加速させる起爆剤となります。

動画に出演してもらったり、投稿で紹介してもらったりすることで、そのフォロワー層に一気に情報が届きます。

信頼や共感を得やすいため、商品・サービスの認知拡大や購買促進にもつながりやすくなります

ただし、誰でもよいわけではありません。ブランドイメージやターゲット層との相性を見極めたうえで、適切なインフルエンサーを選ぶことが大切です。

ハッシュタグを効果的に使う

ハッシュタグは、SNSの中で“見つけてもらう”ための重要なツールです。

投稿する動画に関連するキーワードや、今注目されているトレンドのタグをつけることで、フォロワー外のユーザーにも発見される可能性が高まります。

たとえば、

  • 商品カテゴリ名(#電動工具)
  • 問題解決型のタグ(#DIY初心者向け)
  • 話題のトレンド(#○○チャレンジ)

など、複数の視点で組み合わせると、露出のチャンスを広げられます。

視聴者に「動いてもらう」仕掛けをつくる

ユーザーが動画を“見ただけ”で終わらせず、リアクションしてもらう工夫も拡散には効果的です。

たとえば、動画の最後に

  • 「感想をコメントで教えてください」
  • 「参考になったらシェアをお願いします」
  • 「〇〇な人にタグ付けして教えてあげてください」

など、具体的なアクションを促す一言を加えるだけで、シェアやコメントの数が増えやすくなります。

また、コメントへの返信やユーザー参加型企画の実施など、運用側の“関与”も拡散には欠かせない要素です。

SNS動画の制作費用、いくらかかる?

動画制作を検討する際、気になるのがやはり「どのくらい費用がかかるのか」という点です。実際のコストは、動画の内容や制作方法、依頼先によって大きく異なります。以下にわかりやすく整理しました。

制作内容による費用の違い

制作スタイル 概要 目安となる費用
スマホで簡易撮影・編集 社内で手軽に作成。撮影・編集アプリで対応 〜10万円程度
プロによる本格制作 カメラマン、ナレーター、スタジオ使用など 数十万〜数百万円
演出の工夫あり CG、アニメーション、テロップ、出演者など 構成次第で大きく変動

依頼先による費用の違い

依頼先 特徴 費用感
大手制作会社 実績豊富で安心感あり。提案力も高い 費用は高め
中小制作会社・フリーランス 柔軟な対応と低コストが魅力。得意分野の確認が必要 比較的安価(品質は要確認)

✔ ポイント:
どこに依頼する場合でも「実績」「得意ジャンル」「制作物の雰囲気」が自社に合っているかを事前に確認することが重要です。

費用を抑えるための工夫

  • 企画構成を自社で行う: 制作側の作業負担を減らすことでコストダウン
  • 既存素材を活用する: 過去の動画・写真・資料を再利用すれば撮影費を削減可能
  • 複数本をまとめて依頼: パッケージ化で単価を抑える効果あり

SNS動画マーケティング成功のカギは“戦略”にあり

SNS動画で成果を出すには、単発の投稿だけでは不十分です。

しっかりとした戦略を立て、継続的に運用していくことが成功の近道です。ここでは、マーケティングとして成果を上げるために押さえておきたい4つのポイントをご紹介します。

1. 成果指標(KGI・KPI)を明確にする

「何のために動画を投稿するのか」を明確にしないまま制作を始めると、途中でブレたり、思ったような成果に結びつかなくなってしまいます。

たとえば、

認知度アップを狙うなら「再生回数」や「リーチ数」

購買につなげたいなら「クリック率」や「コンバージョン率」

など、目的に応じたKGI・KPI(重要目標・指標)を設定することで、制作内容や運用方法が自然と具体化していきます。

2. 投稿は「継続」こそが力

SNSのアルゴリズムは、“継続的に投稿しているアカウント”を評価する傾向があります。

最初の数本で成果が出なかったとしても、諦めずに定期的な投稿を続けることで、徐々にファンが増え、反応も高まっていきます。

1本ごとにPDCA(計画→実行→評価→改善)を回しながら、小さくても確実に前進することが大切です。

3. データを見て改善を繰り返す

「なんとなくウケがよかった気がする」では、次に活かせません

SNSでは、再生数・視聴完了率・エンゲージメント(いいね・コメント・シェア)など、さまざまな数値を把握できます。

それらを分析し、たとえば

最後まで見てもらえていないなら冒頭の構成を見直す

反応が少ないならサムネイルや投稿時間を変える

といった改善を積み重ねていくことで、動画の精度はどんどん上がっていきます。

4. 複数のSNSを連携させる

ひとつのプラットフォームだけに投稿するのではなく、複数のSNSを“連携”させて展開することで、相乗効果が期待できます。

たとえば、

YouTubeで公開した長尺動画のハイライトをInstagramリールに

TikTokのショート動画から本編へのリンクをX(旧Twitter)で共有

といった形で、各SNSの特性を生かしつつ、一貫性のある導線設計を行うことが、動画の成果をさらに押し上げてくれます

SNS動画運用で気をつけたい4つの落とし穴

SNS動画は非常に効果的なマーケティング手段ですが、うまく運用するためにはいくつかの注意点もあります。

1. ターゲットとズレた内容は響かない

誰に向けて発信しているのかを見失ってしまうと、どれだけ手の込んだ動画でも効果は期待できません。

企業が「伝えたいこと」よりも、ユーザーが「知りたいこと・感じたいこと」にフォーカスすることが重要です。

2. 計画のない制作は時間もコストも浪費に

ノリや勢いだけで制作を始めると、途中で迷走しやすくなります。

目的、ターゲット、構成、予算、スケジュールを事前にしっかり決めてから着手することで、無駄のない進行が可能になります。

3. 効果測定は“短期”だけを見ない

SNSでは「数日でバズる」こともありますが、それは例外です。

中長期的な視点で動画の成果を追いかけ、一定期間のデータをもとに判断することで、安定した成果に結びつきます

4. 著作権トラブルに要注意

BGM・画像・映像など、使用する素材の権利には十分に注意を払いましょう

著作権を侵害すると、動画の削除だけでなく、企業の信頼を失うリスクもあります。

フリー素材や商用利用OKの音源を使う、使用許可を得るなど、基本的なルールをしっかり守ることが必要です。