目次
1. 導入:変わりゆく製造業と動画の関係
人材不足、国際競争、脱炭素やDX──製造業を取り巻く前提が変わるなか、企業は「伝え方」そのものをアップデートする必要があります。
従来の紙資料や口頭説明だけでは、製品の動きや現場のニュアンスまで伝え切れない場面が増えました。
そこで力を発揮するのが動画で、映像・音・文字を組み合わせて、技術・品質・現場力を立体的に表現できます。
本稿では、DXやグローバル化、VR/AR、AI、サステナビリティ、データ活用といった潮流を踏まえ、製造業における「これからの動画活用」を展望します。
2. 動画とデジタルシフト
企業活動のオンライン化が進み、BtoBの情報収集~比較検討の多くがデジタル上で行われています
日本の中小企業でもデジタル化の効果を高める鍵は「評価指標の設定と管理」にあるとされ、指標を設定・管理している企業ほど効果実感が高い傾向があります ※1
製造業の競争力強化に向けたDXの必要性は経産省の白書でも繰り返し示され、エンジニアリングチェーン/サプライチェーンの最適化やサービス化の重要性が指摘されています。※2
この文脈での動画は、単なる補助資料ではなく営業・マーケティングの中核として、「まず動画で理解してもらい、対話の質を上げる」流れが当たり前になりつつあります。
(※1 出典:中小企業庁「中小企業白書2023 第2節」 )。
(※2 出典:経済産業省「製造業のDXについて」 )。
3. テクノロジー進化がもたらす新しい映像体験
動画の表現は技術進化によって大きく拡張しています。
- VR/AR/MR:工場見学のバーチャル化、作業支援、品質チェックの可視化などで活用が拡大。国内でも工場見学VRの実装例が増えています。
酒蔵「獺祭」のVR見学など、没入型の顧客体験事例も登場 - 3DCG/デジタルツイン:製品が実物化する前から構造・動作を可視化し、設計・検証・提案に活用。営業初期から「完成後の姿」を共有できます。
- AI自動化:ナレーション・翻訳・字幕の自動化で制作運用のスピードと多言語対応力を強化。国内でも生成AIを活用した動画制作の事例が増加
- インタラクティブ動画:視聴者が「見たいパート」を選べる双方向設計。製品別の深掘りや危険予知トレーニングに有効。
4. 製造業のグローバル化と多言語動画
国内市場の成熟化を背景に、海外案件の比率が高まる企業が増えています。そこで不可欠なのが多言語動画。
自動翻訳・AI字幕・AI吹替の進化で、従来より短納期・低コストでの多言語展開が可能になりました。
注意点は、単純な言語変換だけでは足りないこと。安全規格・作法・文化差を反映したローカライズ(字幕表現・事例差し替え・UI表記)で、現地の理解を得られる設計にする必要があるため、機械的に翻訳する部分と従来通り人が翻訳する部分をうまく使い分けることが重要です。
今後は、視聴者の言語設定に応じて字幕・音声が自動切替される配信も標準化していくと考えられるため、ローカライズのハードルは下がっていくでしょう。
5. データドリブンで進化する動画運用
これからの動画は「再生回数」だけでは評価できません。
視聴後の行動変容に焦点を当てたKPI設計がカギです。デジタル施策の評価指標を設定・管理する企業ほど効果実感が高い傾向は政府白書でも示されています ※
| 用途 | 主要KPI例 |
|---|---|
| 展示会動画 | ブース滞留時間/名刺交換数/QR流入数 |
| 営業動画 | 案件化率/商談成約率/提案→受注のリードタイム |
| 採用動画 | 応募数/内定承諾率/面接辞退率の低下 |
| 教育動画 | 研修時間の短縮率/テスト正答率/事故・ヒヤリハット件数 |
さらに、動画視聴データをCRM/MAと連携すれば「誰が、どの動画を、どこまで見たか」を営業活動に反映できます。
これにより動画は数値で語れる資産になり、社内合意も得やすくなります。
(出典:中小企業庁「中小企業白書2023 第2節」
6. 持続可能性と動画
動画はサステナビリティの観点でも有効です。
会議資料やパンフレットのペーパーレス化、オンライン説明会・遠隔研修への切り替えは、コスト削減と環境負荷低減の両立につながります
VR工場見学やオンライン研修の活用は移動削減に直結し、CO₂排出の抑制にも寄与するのがポイントです。
現に業務効率改善やコスト削減を主目的に、コロナ以降は社内研修で動画を活用するケースが非常に多くなっています。
CSR/ESGの取り組み自体も、文章より動画のほうが透明性・臨場感を伴って伝えられます。
このように動画には副次的なメリットとして上記のような側面も持ち合わせています。
7. 未来に向けた製造業の動画戦略
動画活用において重要なのは、動画を単発で終わらせないこと。
小さく始めて、データで検証し、全社に広げる流れが現実的です。
- STEP1:既存素材の再活用
(短尺化/字幕付与/縦型化/チャプター切り出し) - STEP2:部署別の実証
(営業=提案で活用、採用=説明会、教育=安全研修) - STEP3:KPI設計と効果共有
(成果を月次で見える化/ベストプラクティス表彰) - STEP4:全社展開
(動画ライブラリ整備/運用ルール化/制作会社との連携枠)
経産省の白書でも、製造業DXはQCD向上やサービス化・プラットフォーム化と不可分だと整理されています ※
経営層には、制作費を費用ではなく資産として捉え、展示会・営業・採用・教育でのマルチユースとKPI→ROI可視化までを含む投資判断をおすすめします。
(※ 出典:経済産業省PDF / 「ものづくり白書2025」)。
8. まとめ:未来の動画活用をどう描くか
デジタル化、VR/AR・AIの進化、グローバル化、サステナビリティ──その全ての交点に動画があります。
まずは今ある素材の再編集という小さな一歩から始め、KPIで効果を見える化し、社内に動画エコシステムを育てましょう。
動画は「作る」で終わらず、「活かす」「進化させる」ことで企業の競争力に直結します。
製造業の未来を切り拓く伝え方として、動画を戦略の中心に据えていきましょう。





