1. カタログだけでは限界がある理由

製造業の営業担当者からよく聞くのが「カタログを渡しても反応が薄い」「資料請求はあるが商談につながらない」といった悩みです。これは決して珍しいことではありません。

カタログは仕様やスペックを体系的に整理するには最適です。しかし、実際の導入を検討する顧客にとっては、数字や文字情報だけでは「使ったときのイメージ」が湧きにくいのです。

例えば、産業用ロボットのカタログには可搬重量や動作範囲が記載されていますが、「動きの滑らかさ」や「スピード感」「操作性」といった感覚的価値は伝わりません。

また、工作機械の加工精度を示す数値は載っていても、実際に削られる金属の表面がどのように仕上がるかは、静止画だけでは判断できません。

総務省「情報通信白書(2023年版)」によると、動画はテキストの約5,000倍の情報を瞬時に伝えると言われています。

限られた時間で顧客の理解と納得を得るためには、カタログだけでは不足しているのです。

2. 動画が伝えられる「価値」とは?

カタログに不足している情報を補えるのが製品紹介動画です。

動画は「百聞は一見にしかず」を体現するツールであり、顧客の理解を飛躍的に早めます。

ここでは、製品動画で伝えられる代表的な「価値」を整理します。

伝えたい要素 カタログでの伝達度 動画での伝達度 具体例
製品の動き・機構 △(図面や文章に依存) ◎(実演映像で即理解) ロボットアームの可動、加工機の稼働シーン
スケール感・設置イメージ △(寸法値だけでは不十分) ◎(工場内配置を俯瞰撮影) 生産ラインへの組み込みイメージ
細部の質感・素材感 △(写真に限界あり) ◎(光・動きでリアル再現) 金属表面の仕上がり、塗装のツヤ感
使用シーン・運用状況 ×(文章説明のみ) ◎(作業者が実際に操作) 作業効率や安全性の訴求
ブランドや信頼性 △(理念や実績を文章で記載) ◎(社員の表情や現場で感情訴求) インタビュー映像やストーリー動画

動画を活用することで、顧客は自社に導入した後の未来を“追体験”できるようになります。これは紙媒体が持たない圧倒的な強みです。

3. 製品紹介動画を設計する際の考え方

「動画を作れば効果がある」というわけではありません。

成功する製品動画には、共通する設計思想があります。

3.1 顧客視点から逆算する

・営業でよく聞かれる質問を整理する
・他社比較で優位性を発揮できる要素を抽出する
・技術的特徴だけでなく現場課題の解決に焦点を当てる

3.2 キーメッセージを3〜5点に絞る

情報を詰め込みすぎると冗長になり、視聴者が離脱します。

短時間で「なるほど」と思わせるにはポイントを厳選する勇気が必要です。

3.3 ストーリー構成を設計する

・課題提示で共感を得る
・製品で解決策を示す
・導入後のメリットで未来像を描く

3.4 表現手法を選択する

・実写:臨場感・信頼感
・3DCG:内部構造や分解図を可視化
・アニメーション:仕組みをわかりやすく説明
・ハイブリッド:複数手法を組み合わせ説得力を高める

3.5 編集で理解を助ける

・ナレーションや字幕で情報補完
・カット割りで「製品→使用者→環境」と段階的に理解を促す
・インフォグラフィックで数値情報をわかりやすく提示

3.6 用途別に尺を最適化する

・展示会:30〜60秒でインパクト重視
・営業資料:2〜3分でメリット訴求
・Webサイト:1〜2分で簡潔に
・社内教育:5分程度で操作方法を網羅

4. カタログと動画の補完関係

カタログと動画は対立するものではなく、相互に補完し合うものです。

  • カタログ:仕様やスペックなど定量的情報
  • 動画:操作感や質感、使用シーンなど定性的情報)

近年では展示会や営業資料にQRコードで動画を埋め込む事例も増加しています

また、動画は展示会・営業訪問・Web・SNS・社内教育などマルチユース可能で、顧客体験をより豊かにすることに貢献しています

(出典:日本印刷産業連合会「印刷産業動向調査」2024

5.製品紹介動画の制作事例

実写系の製品紹介動画

実写系の製品紹介動画は基本的に撮影したデータもしくは写真を中心に構成するもので、有形商材に適しています。

BtoBの機械系の製品のように実体があり、撮影すれば内容が伝わるものによく用いられます。

クラボウ 様

DNA自動分離装置の紹介動画
DNA自動分離装置「GENE PREP STAR」シリーズの紹介動画。

「製品のポイントをできるだけ簡単に理解してもらう」「日本だけでなく海外でも」使用するという前提があったため、製品を詳しく解説するのではなく、特長を見出しとテンポの良い映像で端的に紹介するダイジェスト形式を採用。

カメラに写らない内部構造はイラストを作成して見える化しています。全体を通して言語による説明を極力省くことで、誰もが直感的に理解できる動画を目指しました。


※弊社の制作実績ページでもご紹介しています。

サンキン株式会社 様

塗膜が剥離しづらい塗料の機能紹介動画

今後さらに普及が進むと予想される電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)に対して、重要になるのが充電環境の整備。
EVやPHVの充電に対応した2段式の立体駐車装置の紹介動画です。

製品の特長を2分程度にざっくりまとめ、YouTubeチャンネルや自社サイトにも掲載することで露出を高めています。


日本毛織株式会社 様

機能性と快適性を兼ね備えたウール製スポーツウェアの紹介動画

ウールの繊維束の内側にフィラメントを包み込み、ウールのソフトな風合いを最大限に活かしつつ快適性能高めた奇跡の新・交撚糸「NIKKE AXIO」
そのAXIOを使った幅広いシーンに対応できる快適性と機能性を備えたスポーツウェア「NIKKE AXIO PRO」の紹介動画

ショールーム等で放映することを想定し、1本を30秒・製品の特徴を3つのキーワードでまとめた動画に仕上げました。

スポーツウェアの「AXIO PRO」、リラクゼーションウェアの「AXIO RICH」、「AXIO(糸)の紹介」の3つの動画を制作しています。


※弊社の制作実績ページでもご紹介しています。

サンキン株式会社 様

物流機器製品紹介動画

バンニング用の可動式スロープの紹介動画。

簡単に設置・撤去ができ、省スペースで運用できることを訴求することで、費用面やスペース面で固定式スロープの設置な困難な顧客の課題に応えています。


※弊社の制作実績ページでもご紹介しています。

株式会社アルボース 様

手指消毒用の衛生用品の紹介動画画

感染症対策のため、手で触れなくともセンサー反応で消毒液が噴射されるという製品。使い方、用途場面、メンテナンス性のなどを紹介、とくにホテル・病院・商業施設などより対策が求めらる施設へ訴求するような構成にまとめました。


※弊社の制作実績ページでもご紹介しています。

アニメーション系の製品紹介動画

アニメーション系の製品紹介動画はシステムやアプリ、保険等のサービスのように実写で説明しづらい無形商材に適しています。

大日本塗料株式会社 様

塗膜が剥離しづらい塗料の機能紹介動画

塗料がはく離するメカニズムの説明やそれを抑制する仕組みといった、専門性の高い技術的な内容を、博士をディフォルメしたキャラクターにナビゲートさせることで、専門知識のない人にも伝わりやすく仕上げました。

株式会社てつでん 様

鉄道のセンサ機器の技術紹介動画

鉄道運行に関わる、様々なメンテナンス業務の負担を軽減できるセンサ機器の紹介動画。専門的な技術を端的に90秒ほどでわかりやすくアニメーションで表現。
展示会やWEBサイトなどでご活用いただいております。

※弊社の制作実績ページでもご紹介しています。

実写+アニメーションの製品紹介動画

撮影できる有形商材であっても、製品の内部構造や活用シーン、フローなど、実写では説明しづらい部分があります。

その場合はアニメーションを組み合わせて説明することで、よりわかりやすく伝えることができ、見る人の端的な理解を促せます。

株式会社椿本チエイン 様

V2X対応の充放電装置「eLINK」の製品紹介動画

パワーポイントなどの説明資料をベースに、端的に伝えたい事が伝わるように情報を最適化。

撮影はせず、既存資料とイラストを組み合わせることで短期間で完成。電力の流れなどの表現にアニメーションを用いることで、製品の特長やメリットをわかりやすく表現できました。

展示会場やWEBサイト、YouTubeなどでご活用いただいています。


※弊社の制作実績ページでもご紹介しています。

太陽工業株式会社 様

メンテナンス業務を効率化する常設点検足場の紹介動画

膜の特性を活かした新しい常設点検足場の紹介動画。

橋梁のメンテナンスに関する現状(※)や製品のメリット、特筆すべき機能、エビデンスなどを5分程度にまとめました。

動画撮影が難しいこともあって全体をイラストと3DCGを使って構成。
撮影が可能な耐久試験や性能試験は動画を使うなど、さまざまな表現を使い分けてわかりすさを担保しています。

※橋梁の点検作業の多くは仮設足場を組んだり高所作業車を用いて行う必要があり、さらに道路管理者や鉄道管理者との協議やメンテナンスコストが毎回かかることから、足場の常設化が進められています。


※弊社の制作実績ページでもご紹介しています。

失敗パターン
・情報過多で冗長化し視聴者が離脱
・音声依存で字幕がなく展示会場で伝わらない
・運用計画がなく一度きりで終わる

成功するか否かは企画段階での設計と運用計画にかかっています。

6. 実践のためのチェックリスト

・伝えたいメッセージは3つ以内に絞れているか
・用途ごとの長さ・フォーマットを想定しているか
・将来的に再編集・分割できる設計か
・工場撮影時の安全面や機密保持を考慮しているか
・制作会社が業界特有の現場を理解しているか

7. まとめ:カタログ+動画で真の情報発信を

製造業では製品の魅力が伝わらなければ競争に勝てません。カタログは不可欠ですが、それだけでは不十分です。

カタログと動画を組み合わせることで、定量情報と定性情報を補完し、顧客の理解と納得を促進できます。
動画は「使うイメージ」を描かせ、カタログは「導入根拠」を補強する。両者を併用することが、これからの製造業の標準となるでしょう。

次回は「工場撮影の難しさと準備」について解説します。