1. 導入:動画が「作って終わり」になっていないか

製造業の現場では「せっかく動画を作ったのに結局使われなくなっている」という声をたまに耳にします。
展示会や採用イベントに合わせて制作したものの、その後はサーバーに眠ったまま。

社内からも「一度作ったら終わり」という認識が強く、活用の幅を広げられていないのが実情です。

しかし、動画は一度制作すれば終わりではありません。
むしろ、そこからどれだけ活用できるかが投資の成果を左右するのです。

動画は「作ること」がゴールではなく「使い続けること」で価値を発揮します。
制作費を単なるコストではなく投資として回収するためには、運用を前提に考える必要があります。

2. なぜ製造業では動画の運用が難しいのか

動画を活用できていない背景には、製造業特有の事情もあります。
まず、動画活用に慣れていないため「どこで使えば効果的なのか」が分かりにくいという課題があります。

展示会や採用イベントでの利用は思いついても、営業や社内教育での活用までは想像できないケースが多いのです。

さらに、営業・広報・人事など部門横断での共有が不足しているため、せっかく作った動画が一部門の中でしか使われず、社内全体に広がらない問題もあります。

また、制作時の内容が更新されず「古い情報のままだから使えない」と放置されてしまうことも少なくありません
結果として「古い動画は逆効果」という心理が働き、活用が止まってしまいます。

こうした事情から、作った動画を「効果的に運用しきれていない」という状況があるのです。

3. 動画を運用する基本的な考え方

動画を活かすための基本はシンプルです。

  • 動画を資産と捉える
    単発ツールではなく、長期的に価値を発揮する資産。再編集や二次利用を重ねるほどROIが高まります。

  • 複数用途を前提に設計する
    展示会・営業・教育・採用などで使える前提で制作。フォーマットを変えるだけで同じ素材を何倍にも活かせます。

  • 効果測定を行う
    再生回数・滞在時間・問い合わせ数などで成果を可視化。社内理解の獲得にも有効です。

  • 定期的に更新する
    製品仕様やブランド変更に合わせて小規模修正や差し替えを実施。常に最新の状態を維持します。

基本的には上記の4つを把握しながら進めることで、効果的に動画を活用することができます。

4. 製造業における具体的な活用シーン

製造業における動画活用は、展示会や採用に限らず社外・社内のさまざまな場面で力を発揮します。

営業活動

製品は複雑な構造や専門性が高く、カタログや口頭説明だけでは伝わりにくいケースが多いものです。

営業担当がタブレットやノートPCで動画を見せれば、顧客は数十秒で仕組みを理解できます。
特に海外顧客や初めて接する相手には「百聞は一見に如かず」の効果を発揮します。

展示会やイベントでは、動画がブースの「呼び込み役」として機能します。
大型モニターに流れる映像は視線を引き、足を止めるきっかけとなり、短尺でループさせることで何度見ても飽きず、隣接ブースとの差別化にもなります。

採用活動

採用活動では、工場や現場の雰囲気を動画で見せることが応募意欲の向上につながります。

「働く人の表情」「設備の清潔さ」「仕事のやりがい」を映像で伝えることで、応募者は安心感を得られます。
結果として応募数が増え、入社後のミスマッチも減少します。

社内教育

社内教育では、安全教育や技能研修に動画を活用することで理解度が飛躍的に高まります。

文章だけでは伝わりにくい安全手順も、動画なら直感的に理解できます。
さらに、一度作った教育動画は繰り返し利用でき、講師コストや研修時間を削減する効果も大きいのです。

Web・SNS

WebやSNSにおいても動画の存在感は大きいです。
公式サイトに動画を埋め込むと滞在時間が増加し、検索順位にも良い影響を与えます。

LinkedInやYouTubeでは、見込み顧客や求職者にアプローチでき、展示会に来られなかった層にも情報が届きます。

活用シーン 具体的メリット
営業活動 複雑な製品を直感的に理解させ、商談効率と成約率を高める。
展示会・イベント 足を止めるきっかけを作り、営業トークへスムーズにつなげる。
採用活動 現場の雰囲気を映像で伝え、応募数増加とギャップ低減に寄与。
社内教育 安全手順や技能を映像で学習。理解促進とコスト削減を両立。
Web・SNS SEO効果やSNSでの認知拡大。展示会後のリードフォローにも。

5. 運用を成功させる仕組みづくり

動画を「作って終わり」にせず、持続的に活用するには仕組み化が不可欠です。

ポイント1:運用ルールを設定

第一に、部署ごとの運用ルールを設定します。
営業は商談で、広報はWebで、人事は採用でと用途を明確にすることで、動画は組織全体に浸透します。
用途ごとに推奨フォーマットを決めることも重要です。

ポイント2:動画管理体制を整える

第二に、動画管理体制を整える必要があります。
クラウドストレージや社内イントラに専用の動画ライブラリを設け、検索・タグ付け・更新履歴を管理します。「最新版がどれか分からない」という混乱を防ぎます。

ポイント3:運用担当者やチームを設置

第三に、運用担当者や横断チームを設置します。
マーケティング部門を中心に営業・人事・広報と連携し、月例で「動画活用事例」を共有することで全社的に利用が広がります。

ポイント4:制作会社と協力

第四に、制作会社との継続的な関係を保ち、再編集・短尺化・字幕追加を柔軟に依頼できる体制を整えます。
動画は鮮度が重要であるため、迅速に更新できる環境は活用度を高めます。

さらに進んだ取り組みとしては、動画活用委員会を社内に設けたり、社内表彰で「動画活用ベストプラクティス」を共有することも有効です。

これにより「動画は資産」という意識が自然と定着します。

6. 成功事例・効果の見える化

動画活用の効果を社内に根付かせるには、成果を数値で可視化することが欠かせません。

営業活動では、動画を商談で活用することで顧客理解が深まり、商談成約率が向上する傾向が見られます。
動画が「補助説明」ではなく「理解促進ツール」として機能することで、提案から受注までのリードタイム短縮にも寄与します。

採用では、工場紹介動画を導入した企業で応募数が増加し、応募者から「入社後のギャップが少なかった」という声が多く寄せられました。
動画が現場のリアルを伝えたことで、定着率改善にも効果が表れています。

社内教育では、動画の導入により研修時間が短縮され、テスト正答率が向上した例もあります。
教育動画は事故防止やヒヤリハット件数の減少にも直結し、安全性の強化という副次効果も生み出します。

KPIとしては以下が代表的です。

動画種別ごとの主要KPI
動画種別 KPI① KPI② KPI③
展示会動画 名刺交換数 滞留時間 QRコード流入数
営業動画 案件化率 商談成約率 提案リードタイム
採用動画 応募数 内定承諾率 辞退率改善
教育動画 研修時間削減率 テスト正答率 事故件数の減少

7. 再編集と短尺化で価値を最大化

動画を分解・再構成するだけで活用の幅は一気に広がります。

  • 5分の展示会動画を30秒のSNSティザーに編集
  • 製品紹介をチャプター化し、営業資料やFAQ動画に活用
  • 教育動画をマイクロラーニング化してスマホで学習可能に

すでに制作した動画を活用することで、制作期間や費用も抑えることができ、活用の幅も広がるため費用対効果をさらに高めることが可能です。

8. 社内に文化を根付かせる工夫

文化定着には小さな仕掛けが有効です。

  • 月例会で「動画活用事例」を共有・表彰
  • イントラに動画ライブラリを設け、誰でも利用可能に
  • 新製品リリースの際に「動画更新」をチェックリスト化

これにより、自然と動画が業務フローに組み込まれます。

9. 追加:ROIの考え方(経営視点)

経営層には費用対効果を示すことが重要です。

例えば100万円で制作した動画を3年間で展示会・営業・採用・教育・Webで使えば、1回あたりのコストは数万円にまで低下します。

教育動画で研修時間を年間100時間短縮できれば、人件費換算で数十万〜数百万円の効果が期待できます。

さらに動画によるWeb滞在時間増加が問い合わせ増につながれば、売上への貢献も測定可能です。

動画は運用すればするほどROIが高まる資産であることを、数値で説明することが肝要です。

10. まとめ:動画を「活かし続ける」文化を築く

動画は作った瞬間が完成ではなく、そこからの活用が本当のスタートです。

展示会・営業・採用・教育・Web発信と活用シーンは幅広く、仕組みと工夫次第でROIも高まります。

ルール・ライブラリ・担当体制・外部連携で基盤を整え、再編集や短尺化で用途を拡大し、KPIとROIで成果を可視化する。

これらを繰り返すことで、動画は企業の資産として息づき続けます。

次回は「製造業×動画の未来──これからの伝え方と、動画活用の新しい可能性」を展望します。