医療機器には、さまざまな機能や特長があります。プロモーション動画をつくるときも、「何ができる製品なのか」を一つずつ説明したくなるものです。
もちろん、機能を正しく伝えることは欠かせません。ただ、スペックや製品画面を順番に紹介するだけでは、実際に導入したときの価値まで伝わりにくいことがあります。
製品に長く関わっている担当者にとっては、機能名を見ただけで用途や利点が思い浮かぶかもしれません。しかし、動画を見る人が、その機能を同じ深さで理解しているとは限りません。製品を開発・提供する側の言葉と、使用者が知りたいことの間をつなぐ必要があります。
特に、医療従事者が日々の業務の中で操作する製品では、「その機能が、どんな場面で、どのように使われるのか」まで考えることが重要です。
今回は、医療機器の機能を実際の「使われ方」へ置き換え、導入後の運用をイメージできる動画にするための考え方を紹介します。
・製品機能を、実際の使用場面へ置き換える考え方
・「状況・操作・情報」をつないで機能の役割を見せる方法
・操作や画面、使用者の動きを撮影前に具体化する理由
医療機器は、機能を見せるだけでは価値が伝わりにくい
製品の機能や画面を順番に見せれば、「この製品には何ができるのか」は説明できます。製品を正しく理解してもらううえで必要な情報ですが、機能だけを切り取ると、実際の業務との結びつきまでは見えにくくなります。
たとえば、ある情報を画面で確認できるとしても、画面のアップだけでは、誰が、どのタイミングで確認するのかはわかりません。確認した情報をもとに、次にどのような判断や行動をするのかも伝わりにくいでしょう。
そこで動画では、「何ができるか」に加えて、「その機能が業務のどこで役立つか」まで整理します。機能の説明を、使用者にとっての価値へ一段進めることで、導入後の姿をより具体的に思い描けるようになります。
このとき、各機能について次の3点を考えていきます。
- どの場面で必要になるのか
- 使用者は何を確認し、何を操作するのか
- その結果、次にどのような行動ができるのか
すべての機能を同じ長さで紹介する必要はありません。見る人が導入後を考えるうえで重要な機能を選び、使用場面と結びつけて丁寧に見せる方が、製品全体の価値も伝わりやすくなります。機能を減らすためではなく、何を重点的に理解してもらうかを決めるための整理です。
「誰が、どんな状況で、どう使うか」から映像を組み立てる
使われ方が伝わる動画にするには、製品の機能一覧から考え始めるだけではなく、実際に使用する人の動きにも目を向けます。
使用者はどのような状況にいるのか。何をきっかけに製品を確認するのか。どのように操作し、そのあと何をするのか。こうした一連の流れを整理し、その中に製品の機能を置いていきます。
一つの使用場面を、短い業務の流れとして考えると整理しやすくなります。
はじめにどのような状況があり、使用者が何に気づき、製品のどこを確認するのか。
そして、得られた情報をもとに次の行動へ移る
映像の中にこの前後関係があると、操作だけを切り取るよりも機能の意味が伝わります。
すると、単独では説明的に見えた機能にも、業務の中で果たす役割が生まれます。
製品の存在感を弱めるのではありません。使用場面の中で見せることで、製品の価値をよりはっきりさせる考え方です。
また、同じ製品でも、立場によって確認したいことは異なります。実際に操作する人と、導入や運用を考える人では、知りたいことがすべて同じとは限りません。動画の主な視聴者を決め、その人が判断しやすい使用場面を選ぶことも大切です。
状況・操作・画面情報をつなぐと、機能の役割が見えてくる
実際の使われ方を映像にする際、エルモでは「状況・操作・情報」を分けて考えます。
使用環境と
人・製品の位置関係
手元や視線
使用者の動き
製品画面や
確認している内容
情報を確認した後の
判断や動き
製品画面のアップだけでは、表示内容は読めても、それがいつ必要になる情報なのかは伝わりません。反対に、使用場面を広く見せるだけでは、どの機能が役立っているのかが曖昧になります。
そこで、状況がわかる広い画、操作がわかる手元、確認している画面などを異なる画角で撮影します。どの順番で見せるかは、実際の業務の流れや、その場面で伝えたいことに合わせて変えていきます。
「状況から操作へ、操作から情報へ」と見せれば、使用者が情報にたどり着く流れがわかります。「情報から確認へ、確認から対応へ」とつなげれば、その表示が次の行動にどう役立つのかを示せます。
ただし、画角ごとに別々の動きを撮るだけでは、一つの場面として自然につながりません。手を動かすタイミング、使用者が見ている場所、製品画面の状態をそろえておく必要があります。編集でつないだときに動きや表示が飛ばないよう、カット同士の連続性まで撮影前に考えておきます。
大切なのは、「この画面を表示できます」で終わらせないことです。その情報によって使用者が何を把握し、どう動けるのかまで考える。そこまでつながって、機能の役割が具体的に見えてきます。
医療現場の所作は、見栄えより実際の運用を優先する
プロモーション動画である以上、見やすさや映像としての質感も大切です。ただし、見栄えを優先するあまり、実際には行わない操作を加えたり、手順を入れ替えたりすると、医療従事者には不自然に見えてしまいます。
操作する手と製品画面の変化が合っているか。使用者の立ち位置や視線は自然か。前後の動きに矛盾がないか。細かな違いでも、製品を知る人ほど気づきやすいものです。
資料だけで判断せず、わからない部分は撮影前に確かめる
こうしたズレを防ぐには、制作側の想像だけで場面をつくらないことが重要です。製品資料や操作手順を読み解き、画面表示と使用者の動きを照らし合わせながら、撮影する場面を具体化します。
確認するのは、操作の順番だけではありません。
操作によって画面がどのように変わるのか、その間に使用者はどこを見ているのか、次の動作へ移るまでにどのような間があるのかも確かめます。
映像では数秒の場面でも、実際の動きは複数の要素が連動しているためです。
資料だけでは把握しにくい操作や画面の変化については、撮影前に操作映像や画面資料を確認したり、実際の動きを見せてもらったりしながら具体化します。
確認したい点も事前に整理し、撮影当日に初めて判断する項目をできるだけ減らしていきます。
誰に何を確認するかを分ける
専門的な内容ほど、誰に何を確認するかを分けておくことも大切です。
| 確認する人 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 製品担当者 | 操作手順、画面表示、製品の状態 |
| 使用場面を理解している人 | 立ち位置、視線、所作の自然さ |
| 制作側 | カットのつながり、内容の理解しやすさ |
それぞれの視点を合わせながら、映像表現は見やすく整え、操作や所作の正確さは関係者と一緒に確かめていく。その積み重ねが、自然で信頼できる映像につながります。
プロモーション動画では、すべての操作工程を手順動画のように見せるとは限りません。場面を短くまとめる場合も、途中を省くことで誤った操作に見えないか、前後の関係に無理がないかを確認します。わかりやすさのために整理しながらも、実際の運用から離れないことが大切です。
撮影当日ではなく、撮影前に「使われ方」を具体化しておく
医療機器の撮影では、製品の見せ方だけでなく、操作のタイミングや画面表示など、多くの要素を合わせる必要があります。そのため、撮影当日に一つずつ決めていると、必要なカットを撮り漏らしたり、あとから動きのつながりに気づいたりすることがあります。
機能と使用場面を整理
動きと表示を確認
人・操作・画角を設計
誤りや違和感を調整
必要なカットを収録
ラフコンテは、完成イメージを見せるだけでなく、製品担当者と制作側が、操作や画面表示について同じ認識を持つための確認資料です。「どの状態から始めるのか」「操作後に表示はどう変わるのか」まで、具体的なカットに沿って確認します。
ここまで具体化しておくと、撮影前の段階で「実際の運用と違っていないか」「必要な情報が抜けていないか」を確認できます。撮影当日にその場で判断することが減り、限られた時間の中でも必要な映像を押さえやすくなります。
同じ場面を複数の画角で撮影する場合は、製品の状態や出演者の動きもそろえます。どの画面を出し、どの位置から動き始めるかまで決めておけば、編集で自然につながる素材を残しやすくなります。
これは、撮影を進めやすくするためだけの準備ではありません。クライアント側も事前に確認すべき点が見えやすくなり、撮影現場で一から説明する負担や、撮影後の手戻りを減らしやすくなります。
まとめ 製品が業務の中で果たす役割まで映像にする
医療機器のプロモーション動画では、機能を正しく説明することが出発点になります。
そのうえで、誰が、どのような場面で使い、その機能によって何を確認し、次にどう動けるのかまで見せる。そうすることで、製品の価値は実際の業務と結びつき、導入後の姿として伝わりやすくなります。
エルモでは、医療機器・医薬分野の動画制作において、製品資料やヒアリング内容を整理しながら、実際の使用場面、操作、画面情報、必要な撮影カットまで具体化して制作を進めています。



